UnsplashのMiguel Brunaが撮影した写真
今回の社の全体会議で『The Titanium Economy』のブリーフィングを笹渕さんにして頂きました。
案の定、反応が良かったのでこちらでも。
笹渕弐戦時レポート
『The Titanium Economy』
チタニウム:チタンは、地球上で4番目に埋蔵量が多くそこら中にある金属。
但し、その物質性≪耐久性や耐食性に優れ強度が高い≫から難加工であり非常に高価である。
また、人類が簡単に扱えない、という意味で「神の金属」とも呼ばれている。チタンエコノミーとは『何十年にもわたり数々の経済的な嵐を乗り越えて強くなっており、人々の経済圏を支えているそこら中にあるがなくてはならない企業』の事を、本書内ではチタンの特性になぞらえ『チタンエコノミー』と称している。
以下、要約する。
チタンエコノミーは、多聞に及ばないような企業で構成されており、最先端のトレンドに欠かせない画期的な製品を生み出し、革新的な活動を行っている。
これらの企業に共通しているのは、絶え間ないイノベーションへの意欲と、世界のAppleやGoogleに匹敵する新しいテクノロジーを取り入れ、展開しようとする熱意がある事だ。
チタンエコノミーの企業は大々的に広告を出すようなブランド企業ではないが、人類の将来にとって、有名なハイテク企業と同じくらい重要な存在である。投資家や政治家、役人、そして一般市民は、これらの企業への投資を強化することの重要性を認識すると伴に、これらの企業の成長がいかに個人や地域社会に多くのプラスの波及効果をもたらし、より質の高い仕事を提供し、地域社会や全体の経済的繁栄を促進するかを理解しなければならない。
投資家やメディアがデジタル一辺倒になりがちな現在、21世紀の成長の原動力は『製造業』の進化である。
そして『シリコンバレーの技術革新とそれに対する資金投入は不釣り合い』でもある。
デジタル革命がイノベーションと成長の並外れた原動力であることに疑問の余地はないが、新型コロナの大流行によるサプライチェーンの崩壊が示したように、物を作り、動かすことは依然として繁栄する経済の基盤であることに変わりはない。ビニール袋を使ってデッキ材を製造しているトレックス社の株価は、過去10年間で約5,000%上昇し、すべてのFAANG(GAFA+Netflix)やS&Pを上回る。
実は、チタンエコノミーの仕事は、平均して賃金が2倍以上になっている。サービス業に従事する労働者の給与が年間3万ドルのところ、チタンエコノミーでは6万3千ドルだ。工場の性質は変化しており、労働条件は一般に快適で、工場は清潔で安全で明るく、最高級のテクノロジーを備えかつ非常に生産性の高い業務へと変貌を遂げている。誰もが勤勉に働くことによって、成功と経済的安定を得ることができる。
高校を中退した人でも、OJT(職場内教育)を受けながらGED(高等学校卒業程度の認定)を取得し、高給で福利厚生の整った職場に移ることができる。
大卒でないラインマネージャーが4人家族を養えるだけの収入を得ながら、子供の大学資金として余剰資金を貯めることもできる。
成功した工業会社で働く秘書は、退職後に400万ドルの年金基金を手にすることができる。
MITの優秀なエンジニアやスタンフォードのMBAを取得した人は、大手ハイテク企業で世界を変えるようなアルゴリズムに携わることができるが、そのような企業は100社もなく熾烈だ。一方チタンエコノミーは、地域の新しい柱となる4,500の産業技術系企業において、あらゆる組織レベルで最も多くの求人がある。AIや自動化に取って代わられる仕事の脅威が強調されているが、熟練した製造業従事者のニーズは逆に高まっている。チタンエコノミーは、『経済成長』と『長期的貧困削減』に関する問題の多くに対処できる。
一人当たりの平均製造業の価値が10%下がると、所得の不平等が13%増加する。
チタンエコノミーの拡大を支援することは所得格差の拡大を是正し、取り残された人々に富を生み出すチャンスを広げる。
しかしそれは、労働者から投資家に至るまで、多くの人々がその可能性を受け入れてこそ実現する。
イノベーションが他国で富を生み出している一方で、国内の多くの町はまだ経済的な墓場に片足を突っ込んでいる状態だ。
しかし、ベンチャーキャピタルのうち、産業技術に投資されるのは1%にも満たない。チタンエコノミー企業の紹介はまた次の機会として割愛し、ここでは、著者が述べられている主張について紹介する。
チタンエコノミーの拠点づくりはどこにでもできるが、無作為或いは自然発生的にできるものではない。その構築には企業リーダー、地方自治体、教育機関の戦略的協力が必要だ。
チタンハブは適切に育成されれば、イノベーションによる付加価値が産業・技術のサプライチェーン全体に絶え間なく広がっていく事を期待される。
その結果、オーナー、従業員、そして地域のあらゆる種類の中小企業に計り知れない報酬がもたらされる。 そして、それは国全体の競争力強化にもつながる。このような企業は、強い目的意識と文化、そして成長の原動力となる顧客中心の価値創造に長期的にフォーカスしている。
つまり、「短期主義」に陥っていない。
このような企業は、従業員の能力を高め、エンゲージメントを向上させる質の高い企業文化を構築することに、非常に熱心に取り組んでいる。
このような企業は従業員に、他の企業以上の「帰属意識」を植え付けている。
従業員に「帰属意識」、つまり包括性、安心感、サポート感を与えている。
これは、職場の結束力を高める上で非常に重要な役割を果たす。
職場でチームの結束力が高まると、チームメンバーの成功、仕事への満足度、自尊心が高まり、不安が軽減される
自分が評価され、つながっているという感覚は、イノベーションを促進することにもつながる。チタンエコノミーに必要なスキルを持つ人材を育成するために、教育資源と政策の転換を劇的かつ迅速に行う必要性を明らかにした。
さらに緊急性を増しているのが、定年退職を間近に控えた、熟練労働者の問題だ。
電気技師の平均年齢は55歳。
電気工事士の平均年齢も55歳、配管工の平均年齢は57歳。
つまり、今後10年間で退職していく人材や専門知識について考えるとき、現在、専門学校で育っている新しい人材が、その人材の代わりになることはありえない、ということも忘れてはならない遅らせることの代償は深刻である。
私たちは協力し合わなければならない。
チタンエコノミーの企業やコミュニティーに身を置くことで、より良い未来が約束される。今こそ、行動すべき時だ。
『The Titanium Economy』
時は来たれり!
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